本研究では、公立小中学校選択システムの構造および運用の在り様について、日米2地域を取り上げ比較研究を実施した。対象地域としては、カリフォルニア州サンディエゴ統一学区および東京都品川区が選定された。また、付加的に、我が国における全国市町村教育委員会における学校選択システム導入の動向に関して調査を実施し、今後予想される学校選択制の推移について予測も行った。 サンディエゴ統一学区における学校選択制は、子どもの個性の伸張を最大限促進する観点からさまざまな仕組みが用意されている点に特徴がある。マグネット・スクール、近隣校以外の一般の公立学校選択システム、VEEP、学区間学校選択、そして、チャーター・スクールと言った具合である。他方、東京都品川区における学校選択制は、まずは小学校40校を4ブロックに分割して、ブロック内での選択制の導入、中学校は区内1ブロックで導入というかたちで始まった。本格的な学校選択システムは我が国では始めてであったために、新しいシステム準備に追われ、選択制の導入趣旨の明確な定義、趣旨を生かすための付随的な教育プログラムの整備などに立ち遅れが見られる。サンディエゴ統一学区における学校選択制と好対照である。両者を対比したとき、我が国の学校選択システムで決定的に欠けているのは、学校間接続関係に対する配慮の不足である。自由通学区域制を採用するロスアンゼルス統一学区では、学校ファミリー構想として展開されている。 付加的に実施された、我が国の全国市町村教育委員会対象の学校選択制に関する意識調査では、学校選択制を肯定的に評価する観点から導入について検討中を含めると、40%強の市町村が学校選択制導入に前向きであることが判明した。我が国の地方学校システムには激動の兆しが現れていると読むこともできる。
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