本研究では、高等教育の大衆化、生涯学習社会、知識社会の到来のなかで、大学の知がどのように地域社会の還元されているか、日本海地方にある財政基盤の弱い自治体とそこに立地する大学を対象に、教員個人と自治体の地域交流の交流実態、要請ルート、そして地域サービスに対する教員の誘因と障害、そして今後の国立大学のあり方に対する意識から、国立大学が地域貢献を志向するうえでの問題点を探った。調査対象は、青森、秋田、山形、富山、石川、福井、鳥取、島根県に立地する10国立大学、4公立大学、5私立大学の講師以上の教員と、8つの自治体中堅幹部(課長)である。調査から明らかになったことは、以下の4点である。 第1は、国立大学と自治体が対等な交琉をはかるにはその基盤が脆弱であることである。それは、交流が教員の個人的関係に依存していること。国立大学が行う科学技術や先端的知識が、個人的ルートによって自治体にわたっていることである。 第2は、自治体は大学の知恵を借りたい事業内容をもっているが、連絡協議会を設置している自治体は、県で23%、市町村では6%に過ぎないこと。しかし、連絡協議会を設置している自治体ほど、日常的な大学との交流頻度が大きくなることである。 第3は、国立大学と地域社会との今後の交流を顕在化させるには、教員に対する誘因が必要であることである。とくに、連帯的誘因のみならず、経済的報酬が必要である。 第4は、国立大学と公立大学とのポジショニングの問題である。両者の役割が、今後、似通ってくることである。
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