本研究は、日本海地方にある自治体とそこに立地する大学を対象に、教員個人と自治体の地域交流の交流実態、要請ルート、そして地域サービスに対する教員の誘因と障害、自治体の大学選好、そして今後の国立大学のあり方に対する意識から、国立大学が地域貢献を志向するうえでの問題点を探った。 大学・自治体調査から明らかになったことの第1は、国立大学と自治体が対等な交流をはかるにはその基盤が脆弱であること、交流が教員の個人的関係に依存していることである。国立大学が行う科学技術や先端的知識が、個人的ルートによって自治体にわたっていることである。一方、自治体は大学の知恵を借りたい事業内容をもっているものの、連携のノウハウやコーディネート機能が欠如している。このもどかしさの背景には、直接的には大学と自治体を繋ぐ連絡協議会等が十分に設置されていないことにあるが、何よりも長く我が国の地方行政が高等教育を守備範囲としてこなかったため、十分な交流回路が作られてこなかったことによる。 第2は、自治体調査より、連絡協議会等をもつ自治体は、地域課題への対応に有益な効果をもたらすといえる。具体的には、連携協議会は、大学教員との相談回数や地域課題を鮮明にする傾向ある。この結果から、国による地域連携推進事業は、大学・自治体間に組織間リンケージを形成することが示唆される。 第3は、地域サービィスのインセンティブとして、「連帯的誘因」のみならず、「目的的誘因」が効いていることである。教育・研究活動の一環として、教員の専門分野に応じて地域サービスを捉えることが大切である。 第4は、地域交流が自明視=組織化されている公立大学については、当然国立大学教員よりも交流実績が多い。しかし、今後の要請について慎重な態度を示すのも公立大学教員である。公立大学教員の慎重な態度は、地域貢献を目指す国立大学にとって考慮すべき点である。
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