本年度の研究成果としては、研究発表の項目にも挙げているとおり、米国の教員評価システムの中でも特に近年の動向として注目されている「公立学校の同僚教員評価システム」に注目して、その先進的事例(オハイオ州トレドとコロンバス両学区)の現状紹介と分析、さらにはそれらの動向を受けて先般(1999年)成立したカリフォルニア州制定法規定にみる同僚教員支援・評価プログラムの分析を通して、同僚教員評価制度のもつ意義と課題について考究した。 その結果、同僚教員評価制度の意義としては、評価制度自体が被評価者の処遇よりも支援を主眼としている点や評価に携わる教員(相談教員)が通常の授業活動を免除されている点、さらには被評価者へ評価内容を開示している点が指摘できる反面、相談教員自身は評価の対象となっていないことや評価制度そのものの費用対効果などに問題があることが判明した。 カリフォルニア州の制定法規定の分析からは、規定そのものは同僚教員支援・評価プログラムを各学区へ認める「許可規定」の形式を取りながらも、同プログラムを設計する際の基準が指示されるとともに、その実施に必要な経費の一部州援助も規定されており、州主導によるプログラムの導入・実施が強く看取された。先に述べた先進的な事例学区と比べ、あくまで学区当局の行う勤務評定の一部として活用されるように設計されており、労使のバランスにも配慮した形態となっていることが明らかとなった。
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