家庭場面で発達障害児が示す問題行動は、本人や家族の生活を脅かし、一家離散にもつながる深刻な問題である。その一方で、わが国においては、支援体制は十分に整備されておらず、家族が問題を抱え込んでいるのが現状である。このような問題に対して、本研究では、問題行動を示す発達障害児の本人と家族を中心とした包括的な行動的家族支援プログラムを作成することを目的とし、以下の方法により研究を進めた。 1.近年の問題行動に対する有力な介入方法とされている包括的な行動的支援に関する概念的・方法論的な検討から、家族支援の枠組みを探る。 2.一家族の長期的な支援経過の検討から、本人と家族を中心とした包括的な行動的家族支援プログラムの作成方法を探る。 3.行動的家族支援プログラムの複数事例への適用から、その効果と課題を探る。その結果、1に関して、本人や家族を中心とした家族支援の枠組みとして、(1)人を中心とした価値観、(2)問題行動の機能的アセスメントの方法論、(3)文脈における適合性を高めるための方法論が、明らかにされた。 2に関して、知的障害養護学校中学部の事例に対して、家庭場面のライフスタイルの査定、活動の遂行、母親の要望、問題行動の機能的アセスメントによる情報から、対象児と母親の必要性と実行可能性に基づいた標的行動と介入手続きの選定し、その効果性と実行性を3年間に渡り査定した。その結果、(1)問題行動の減少し、望ましい日課活動やライフスタイルの変容、関係者による高い社会的妥当性の評価、が示された。その効果性と実行性に影響する要因として、(1)初期の望ましい変容、(2)補助的手段の継続的実行と直接手段の実行困難、(3)望ましくない変容に伴う介入手続きの消失を補う支援の必要性、が指摘された。 3に関して、知的障害養護学校小学部の3事例、青年期の2事例に適用した結果、(1)問題行動の減少、望ましい日課活動の充実、高い社会的妥当性、が示された。その効果性と実行性に影響する要因として、(1)問題行動の機能推定情報の不足、(2)母親への介入手続きの伝達の不足、(3)母親の必要性と実行可能性が異なる場合にそれを補う支援の重要性、(4)補助的手段の継続的実行と直接手段の実行困難、(5)家庭内やライフスタイルに応じた支援体制の構築の必要性、が指摘された。
|