本年度は、わが国における地域教育課程経営の実態を把握するために、教育委員会や学校を訪問し調査研究を行った。全体的として、教育行政による教育課程管理が厳しく画一的であると評価されている愛知県であるが、個別の事例に注目すると県全体の様子は決して画一的ではなく、県内においてもかなり多様性が見られ、特に、教育事務所レベルでかなり相違があることが解った。 これまでの歴史的経緯に規定されて、県下でも大きくは尾張と三河とで違いが見られるが、それぞれの地域内で特徴的な「地域カリキュラム」についても、基本的には依然としてこれまで通りの運用をしているところと、こうしたカリキュラムの設定が学校独自の教育課程の設定の支障となることを認識し、その廃止を検討しているところがあるなど、今日の教育課程経営をめぐる状況変化に対応した動きが、部分的にではあるが見られる。この点については、短期間の間に全体にわたる大きな変化も予想され、引き続き今後の追跡調査が必要である。 同時に、比較研究の端緒としてイギリスにおける教育課程経営研究の体系と、LMS(Local Management of Schools.敢えて日本語に訳すなら「地域的な学校の経営・管理」)のもとでの教育課程経営の実態についてレビューを開始した。今後、比較的な視点からは、近年になって国レベルで大きな変化が生まれてきている中国などの事例についても検討が必要であることが解った。
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