第一に、初年度に引き続いて、わが国における地域教育課程経営の実態把握のための調査研究を、主として二つの地域を重点として行った。 一つは、これまで全体的に教育行政による教育課程管理が厳しく画一的であると評価されている愛知県の事例に注目して、県全体の概要の把握に努めるとともに、同県に特徴的と言われる「地域カリキュラム」の今日段階での動向、特に、そこにおける教育課程経営の構造や実態について検討した。もう一つは、逆に教育課程経営の地域的な改革が進んでいる北海道宗谷地区の事例について、特に小学校での取り組みを中心に検討した。事例校をもとにした具体的な検討によって、地域教育課程経営ともいうべき教育課程づくりの実践が、次第に構造的なものとして組み立てられつつあることが解った。 第二に、比較研究の一環として、近年、教育課程経営改革が進んでいると言われるアジアで、特に特徴的と言われる中国(上海と北京)における教育課程経営の実態についても、関係研究者に対する聞き取り調査を実施するとともに、先進的な教育課程経営改革を進めている幾つかの重点学校を訪問して調査をした。国内の教育水準の全体的な向上については疑問の余地があるが、特定の重点校における教育課程編成は、わが国におけるよりも徹底したものになっており、「エリート教育」の基盤が急速に築かれてきていること、また、それとの関わりで市場化の導入が具体的な形をとって進行していることが解った。
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