平成12(2000)年度はアジア諸国における経済危機への対応として、「先進国」化政策、教育の「優秀化」政策について、研究計画にあげたマレーシア、シンガポール、タイ、中国、バングラデシュ、ベトナム、ネパールの7カ国の状況、近年の動向、将来展望に関する基本的情報を収集した。マレーシアについては民族統合学校と高等教育の民営化の問題について、中国については数学教育重点校の教育方法について、タイについてはイスラーム系教育機関について、それぞれ別の研究資金により現地調査を行い、各教育機関・政府機関・国際機関の訪問と専門家インタビュー、資料収集を行った。 本年度のこの科研による現地調査としては、11月22日から29日にかけて、バングラデシュとシンガポールを訪問した。バングラデシュでは教育省、政府系小学校、NGO系小学校、国際機関などを訪問し、授業観察を含めたインタビュー、および技術教育と価値教育にかんする第一次資料の収集を行った。シンガポールではマイノリティの学力向上のための民間組織を訪問し、教育技術や方法についての意見交換を行った。これらの調査により、各国の教育に与えた経済危機の状況は、その国の発展状況やグローバル化の進展の度合いによって異なる側面と、ある程度共通な側面に分かれることがわかってきた。 国内においては、各国資料の整理・分析を行うとともに、国立教育研究所やアジア経済研究所を訪れ、各国の基本経済・教育統計や公文書などによる比較研究のための基本的情報の収集に努めた。次年度はこれらの仮説を検証する事例の拡大として、本科研により、ベトナムの先端技術教育と価値教育の状況についての現地調査、他の研究資金によってネパールのマージナルグループについての教育調査を計画している。そしてその総合分析のための比較のフレームワークについての準備を行うことになる。
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