平成13(2001)年度は、アジア諸国における経済危機への教育的対応の調査として、マレーシア、シンガポール、ベトナム、ネパール、タイにおける技術教育、価値教育、高等教育改革などについての文献収集、情報収集を行った。 マレーシアについては昨年度に引き続いて民族統合学校と高等教育民営化の動向について当科研とは別のファンドによって調査を継続し、経済危機以来の教育改革の対応動向として私立大学の拡大と水準の維持、国立大学の企業化、技術移転の促進、産学提携の推進などの詳細について分析し、論文としてまとめた。 シンガポールについては次世代の教育的エクセレンスの維持を目指した才能児教育の動向を調査し、教育省における関連セクションと文献を調査した。ネパールについては8月に政変があり、国家非常事態宣言が出される事態となったため、現地調査は断念し、主として文献や各種メディアを通じた情報収集を行った。 本科研による海外調査としては、8月19日から27日にかけて、ベトナム、ハノイ市およびホーチミン市を訪問し、国家ハノイ大学をはじめとする高等教育機関や国立教育研究所などにおいて、現地専門家と意見および情報の交換を行った。あわせて収集した文献を整理して、ベトナムにおける経済危機の状況と、それに対する対応のなかで教育の果たす役割について分析した。 以上のようなアジア各国の教育的対応の事例のなかから、アジア諸国における経済危機への教育的対応のパターンを検出し、現状についての位置付けを行うとともに、それらに影響を与えている社会的・経済的・文化的背景との関連について考察を加えた。本年度は研究の総括という意味で、上記の知見に昨年度のバングラデシュや中国、タイについての考察を加味して、さらに包括的なパターン分析を行い報告書にまとめる予定である。
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