1.中学校や高校あるいは地域社会での青年の問題行動は、フランス社会の最も喫緊の教育課題であり、青年層を対象とした雇用の創出や厳罰主義の適用といった即時的政策の一方で、学校における教科としての「公民科」教育、および生徒の参加制度を充実させつつ、学校生活全体を通して公共道徳と社会性の定着・育成を図るという、中長期的な方法をも追求してきている。 2.研究初年度においては、まず小学校、中学校および高校の公民教育に関する教科書並びに各種の参考図書、さらに近年目だって多くなってきている校内暴力・非行に関する研究文献、さらには生徒代表の育成に関する資料を収集し、整理するとともに、分析の枠組みについての基本構想を立てた。 3.フランスへの現地調査においては、フランス文部省が特にその生徒参加の定着と生徒代表の養成教育についての特別プロジェクト地域に設定し、一定の成果をあげてきているグルノーブル大学区での活動状況を調査した。現地の中学校および高校を訪問し、また生徒代表とも意見交換をおこなった。特に、長くその活動の中心を担ってきたジュールダン(Pierre Jourdan)氏、およびその後任となったデュラン氏(Damien Durand)による研究レヴューでは、多くの示唆を受けた。 4.生徒代表養成プログラムについて実績と定評ある2つの代表的なガイドブック"Delegue des eleves au college"(中学生用)、"Delegue flash"(高校生用)の翻訳・発行の許可を得て、現在その作業に取り組みつつある。
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