研究概要 |
今年度は,当初計画していたシステムズアプローチをより包括的なガイダンスカウンセリングシステムとするために,第一段階として国内外の実践モデルの事例研究を行った。その結果,学習面,進路面,心理・社会面に問題を抱える生徒を援助するチーム(Student Support Team,以下SSTと略)による生徒援助システムを日本に適合するよう開発を行った。SSTに関しては,石隈利紀のチーム援助をはじめアメリカメリーランド州ハワード郡公立学校システムにおけるStudent Support Team(1996),ノースカロライナ州ウェイク郡公立学校システムにおけるStudent Support Team/Collaborative Model(1999)の実践を参考にした。このSSTモデルに基づいて,第二段階の実証研究では,兵庫県下の2校の小規模・中規模中学校において効果測定を行った。SSTの実施期間は,本年度の1学期間である。効果測定は,生徒に対してはSST実施前後に行った「教育相談のための綜合調査」(大阪心理出版)の得点比較および学業成績の変容比較,教師に対しては「学校経営診断カード(児童・生徒指導編)」(牧昌見編)による組織評価の変容比較を実施した。また,生徒の行動記録や,チーム援助記録,チーム会議録等を電子的に管理することを目的として,マイクロソフト社のAccess2000によって独自のSSTデータベースソフトを開発し,対象校での運用を行った。対象生徒は,学業不振生徒であり,心理・社会面ならびに進路面にも問題をかかえている。SST実施後は,特に情緒面での安定性が高まり,2学期以降学業成績の向上がみられた。また,教師集団もSSTを通して,共通理解の深化とコミュニケーションの活発化が図られ,組織改善が促進された。したがって,SSTは短期間であったが,生徒や教師集団への高い変容効果をもつことが明らかとなった。
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