大学が生涯学習社会における新たな役割を担うことは、その対象に非伝統的学生を包摂することを意味する。ただし、非伝統的学生の定義からして、正課課程に入学する社会人学生から、大学が開設する公開講座の受講生までを含むわけであるから、非伝統的学生への支援もまた多様とならざるを得ない。すなわち非伝統的学生への支援は、ソフト面ではカリキュラム(またはプログラム)の開発と学習相談事業の充実、またハード面では非伝統的学生のための全学的な組織の整備に大別することができる。 本年度の研究では、後者のハード面に注目して、国公私立の全国主要大学における生涯学習系センターを対象に調査を実施した。調査は、(a)当該大学および生涯学習系センターによる大学開放事業の実態把握、(b)生涯学習系センター長の意識調査、(C)生涯学習系センター教員の意識調査の3種から構成される。回収された有効標本数は、実態調査に関するもの97、センター長調査96、センター教員調査115であった。 データを分析した結果、設置主体の如何を問わず、(1)大学は一様に大学開放に、つまり非伝統的学生の受け入れに熱心な取り組みをしている、しかし、(2)正課教育の開放は、学部および大学院等、既存の部局が所管し、生涯学習系センターの所掌する事業は機能的開放と学外社会との連携協力事業に限定された、また、(3)生涯学習系センターの条件整備、特に人的配置の面で、国立と私学の対応は大きく異なるなど、興味深い諸傾向が明らかになった。 これら調査結果は、昨秋の日本生涯教育学会第22回大会(於、国立教育政策研究所)において発表したところである。しかし、学会発表では、時間的な制約もあって、考察は、調査結果の一部分に限定せざるを得なかった。したがって、現在、得られたデータのさらに詳細な分析を実施中であり、その成果は、科研二年次報告書として今年度中にとりまとめ中である。
|