研究概要 |
今日、統合化が現実のものとなりつつあるヨーロッパ諸国においては、「ヨーロッパ市民」意識の形成が共通の教育政策課題となっている。本研究は、この課題達成のために追究されている「異文化間教育(intercultural education)」政策の展開についての理論的研究をその課題としている。 研究初年度の本年度は、異文化間教育政策を特に積極的に推進している欧州審議会(Council of Europe)の本部(ストラスブール)及び欧州青年センター、ヨーロッパでの異文化間教育研究の拠点であるロンドン大学(異文化間教育研究センター)、パリ第5大学(「ジプシー・ロマ」研究センター)等において、異文化間教育研究者、政策推進者等へのインタビューを実施すると共に資料収集をおこなった。その結果、本年度においては以下のような成果を得た。 まず、1993年に開催された欧州審議会のウィーン・サミット以降の主要な教育政策である「All Different,All Equal」施策に関連する異文化間教育関係資料、ヨーロッパにおけるマイノリティ教育関係資料及び異文化間教育研究関連資料を得ることができた。 次に、上記の資料の分析を進めることにより、ヨーロッパにおける異文化間教育政策は理論的な面における追究と共に、各国の諸学校段階及び社会教育分野において、教育実践や青年の異文化間訓練の実施段階に入っていることが明らかになった。 また、ヨーロッパの異文化間教育研究者との対話及び収集資料の整理、分析を進めたことにより、異文化間教育実践、多文化共生の実現のために「異文化間トレランス」が理論的課題となってきていることが明らかになった。
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