研究概要 |
本研究は、EU諸国で追究されている「異文化間教育(intercultural education)」政策の展開についての理論的研究をその課題としている。 まず、上記の理論的な検討のため、1993年に開催された欧州審議会のウィーン・サミット以降の主要な教育政策である「All Different, All Equal」施策に関連する資料、マイノリティ教育関係資料及び異文化間教育研究関連資料を体系的に収集し、分析を進めた。 上記の資料により、これまでに得られた知見を整理した。その概要は、以下の通りである。 1.ヨーロッパにおける異文化間教育政策は、1993年度のウイーン・サミット以降、マイノリティ教育・対策から、本格的に、新しい欧州市民形成へと展開している。 2.具体的には、新しい欧州市民教育育成のための教育である"The European Dimension of Education" "Education for Democratic Citizenship"などが教育政策の基盤になって、教育目的の共有化が図られている。 3.さらに、ヨーロッパにおける異文化間教育政策は理論的な面における追究と共に、各国の諸学校段階及び社会教育分野において、欧州市民教育のための、教育実践や青年の異文化間訓練の実施段階に入っている。 4.以上により、移民の定着、EU各国の国民の移動、旧東欧から帰還者などにより一層「多文化社会化」するヨーロッパにおいて、異文化間教育を共通の目的とし、しかも民主的な市民の育成のための鍵になる概念としての「異文化間トレランス」を実現することが、現今の重要な課題となっていることを確認した。
|