本研究は、京都府・奥丹後の地域教育運動と到達度評価運動の実態の検討を通して教育における住民自治と到達度評価がどのような内的関連性を明らかにすることを目的としている。したがって、聞き取り調査や資料調査とともに、到達度評価や教育における住民自治についての理論研究が必要である。 平成12年度には、理論研究面では、到達度評価論において教育における住民自治がどのように研究されているか、および、戦後日本社会で教育や人間形成のあり方がどのように変容してきたかを論文異にまとめた。調査活動については、奥丹後の地域教育運動をリードした峰山中学校関係の聞き取り調査と資料調査、および京都府全体の到達度評価実践に関する聞き取り調査を進めた。その成果の一部は「京都府奥丹後・峰山中学校における到達度評価実践の展開」と題して教育目標・評価学会で発表した。峰山中学校に関しては、育友会(PTA)活動や独特の学習集団づくり、「目標学習」と称する総合的な学習の先駆的実践など、現代教育に対して有効な示唆を与ええる教育実践や父母の活動を明らかにできる可能性が出てきた。ただし、これらを論文にまとめるにあたっては理論研究をさらに深めることが痛感されてきた。到達度評価実践における学習集団の問題は研究が希薄であるが、「習熟」概念がこれにかかわることから、「習熟」についてのこれまでの研究を検討することも進めた。 当初の計画では、平成12年度には網野小学校についての資料調査を進めるはずであったが、峰山中学校関係の調査が中心になった。峰山中学校関係について、予定していたよりはるかに資料面、聞き取りする相手の両面で豊富だったことによる。しかし、主には峰山中学校関係者を通して資料を収集したとはいえ、それらの資料は奥丹後全域、あるいは京都府全体にも及ぶものである。次年度は、これらの資料の検討からはじめたい。
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