研究課題
平成13年度には、主には研究報告書作成に向けて、昨年度に収集した資料の分析と補充調査を行なった。奥丹後の地域教育運動および到達度評価実践において、川上小学校と峰山中学校の教育実践がよく知られており、他校への影響力も大きかった。そこで、教育実践の詳細な分析はこの二校に限った。その一方で、実践の社会史的背景を探るために、京都府の到達度評価実践の全体像や特質、奥丹後地域の人口動態や産業構造の変遷、高等学校進学率の推移などもとらえた。峰山中については、育友会(PTA)関係の資料も豊富に収集できた。とくに育友会誌『やまびこ』を1960年代後半から80年代前半まで通してみることができ、これによって父母の教育要求の変化をとらえることができたのは有益だった。また、学校教師の協力のもと育友会員や地域の人々によって組織された民主教育の会や環境浄化の会の動きについても把握することができた。本研究は、奥丹後地域を研究フィールドにして、教育における住民自治と地域教育運動や到達度評価実践との内的連関を明らかにすることであった。全12章に及んだ研究報告書作成を通して明瞭にみえてきたことは、1960年代の高度経済成長を経る過程で地域社会の人間形成機能が大きく衰退し、そのことの影響が子どもの心と身体の変化として、ときには学校の「荒れ」として現われ、学校教育が地域社会の協力をえないと立ち行かない状況になっていたということである。奥丹後では、教材を地域社会に求めるだけでなく、父母に授業公開をしたり、教師と父母がともに教育研究集会をもったりなどしており、それが地域教育運動であり、また到達度評価実践でもあった。教育における住民自治は教師たちが地域に目を開き、地域の人々とともに教育をつくり、かつ地域の人間形成機能を高める活動を展開するなかで成立したのである。
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