本研究は、近代日本における幼児教育思想の形成と展開を、比較教育思想史の手法を用いて検討し、日本の幼児教育思想の系譜とその特質を明らかにしようとするものである。 本年度は、明治中期の幼児教育界において指導的な役割を果たした小西信八、中村五六、東基吉について、とくに彼らの著作の検討から、欧米の幼児教育思想の受容とその日本的変容について明らかにした。従来の研究では、小西信八についてはほとんど検討されていないが、小西が東京女子師範学校附属幼稚園の第三代監事として果たした役割は大きく、彼の幼稚園教育の取り組みが明治中期の日本の幼稚園のあり方を方向づけたといっても過言ではない。そこで本研究では、小西の幼稚園監事としての活動に注目し、その検討を通じて、幼稚園教育の進展に果たした小西の役割や彼の幼稚園観について明らかにした。平成14年5月の日本保育学会では、「小西信八の幼稚園観」のテーマで研究成果の報告を行う予定である。また、中村五六、東基吉の幼児教育思想については、著作のみならず、フレーベル会における研究活動にも焦点をあて、彼らの研究活動が明治中期以降の幼児教育思想の形成と日本の幼稚園教育のあり方にいかなる影響を与えたのかについて、検討を行った。今後はさらに、大正・昭和戦前期における幼児教育思想の展開について、欧米の新教育理論との影響関係に着目しながら、研究を進める予定である。
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