本年度は、研究期間4年の2年目にあたる。そのため、昨年度の実績、すなわち、戦時体制下における教育政策、および国民統合・動員に関する先行研究の検討・基本文献の収集という成果をふまえ、その上で、基本資料として県庁文書を中心に収集した。 具体的に示せば、全国小学校教員精神作興大会・「御真影」および教育勅語謄本下付、国体明徴運動と教育等に関する一次史料について、これらを比較的よく保存していると思われる、国立公文書館、宮城県立図書館、群馬県公文書館、長野県歴史館、大分県立公文書館、宮崎県立宮崎図書館に所蔵の文書を調査・研究した。このなかで重要と思われるものについては、マイクロフィルム撮影およびハードコピーにして収集した。収集した史料は、順次整理を行い、目録化しており、現在1931年〜1937年分については、仮目録の入力が済んだ段階である。 さらに、今年度は、戦時下の国民統合の「道具立て」としての「御真影」が神格化するエポックとなると思われる、1933年に発覚した島根県立松江高等女学校の「御真影」・教育勅語謄本紛失事件とその後再下賜嘆願運動という個別事例についての調査研究を行った。これらについては、国立公文書館所蔵の公文書のほか、島根県立図書館所蔵の新聞雑誌などについても調査した。 こうした資料調査の成果の一部として、本年は日本大学文理学部人文科学研究所『研究紀要』第63号(2002年)に「島根県立松江高等女学校の「御真影」・教育勅語謄本紛失事件の顛末」と題する論文を発表した。さらに、昨年度から収集した資料などを基に府中市教育委員会『府中市教育史』通史編上巻、2002年にもその成果を共著として発表した。
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