研究課題
本研究は、現代日本の大学生の学習状況について、学習者の「学習技術」という観点から現状把握することを目指した。大学生の学力低下、学習不足等が問題となっている中で、その原因が、彼ら学生が身につけている学びの技法・方略や学びの姿勢・構えといったものの不十分さにあるという問題設定をした。この種の学びの要素をひとまずスタディ・スキルととらえ、実態把握のための枠組みを構築するため、アメリカにおける事例研究や、日本国内における先行事例に関する情報を集め、研究組織内での議論を深めていった。既存の枠組みを用いたり、オリジナルのプレテストを実施したりして、大学生の学習技術診断についてのケーススタディも試みた。また、狭い意味での小手先の技巧だけでなく、学習者の心理的特性・態度等にも目を向け、それらを総合的に分析しうる質問紙調査を企画し、実施した。大学生はもとより高校生に対しても、彼らの学習方法に対する自己評価を測定し、結果を分析した。それら多様なアプローチによって明らかになったことは次の通りである。高校生にしても大学生にしても、授業のノートを取ったりテストを受けたりするときの重点認識や教室のマナーおよび課題遂行などに関する意識はわりあい高い。それらは言ってみれば受動的な学習者としての体制構築であり、これにはある程度成功していると評価できる。これに対して、学習者間で差がついてくるのは、学習者の学びの姿勢としての自発性・自律性の程度であり、これらの要素の大小によって、学習計画の自主的立案とその遂行、知的関心といった側面で格差が生じ、それが学力低下や学習意欲の低さとして観察される元になっていると推測できる。したがって、学生の自主・自律の精神をいかに育むかが、教育政策上も重要であることが示されたといえる。
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