本年度の研究は、サイバースペースにおける青年期初期の自我構造がいかなる影響を受け、青年のアイデンティティ形成にどのような変容をもたらしているのかを、理論的分析から実証的分析へと進めることを目的としている。 理論的分析の総括として、ポスト・ヒューマンという新しい概念を導入することにより、近代社会が作り上げてきた、統一された自我をもった人間、という人間観が、現代の高度情報社会、ネットワーク社会では崩れつつあるという結論が出された。この成果については、第50回中部教育学会(平成13年6月:富山大学)で「人間観の再構築(ディス・コンストラクション)」と題して発表した。 理論研究の総括を基に、中学生の情報機器へのアクセス状況、メール会話の実態などについて、個別にインタビューを重ね、メール会話内容を収集した。この予備的調査から明らかになったのは、質問紙調査によって多くのサンプルを収集するタイプの分析より、むしろ、個別のデプスインタビュー、追跡調査などのような質的データ調査が、本研究テーマには適しているということである。 したがって、次の課題として、中学生に対する定点観測的な調査を次年度に実施する必要があると考えられる。
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