本研究の目的は、現代の学校教育システムが機能麻痺をきたしている原因を、ポストモダン社会における人間観の変化に求め、その理論的、実証的検討を行うことである。以下では、年度を追って、研究の概要を報告する。 1)平成12年度より開始した理論研究では、とりわけアメリカにおけるポストヒューマン研究の動向をレビューし、理論的に整理することをほぼ完成させた。 2)平成13年度からは、わが国の青年期概念と現代のサイバースペースにおける自我の在り方のズレについて、歴史的、事例的検証を行った。そこでは、もはや、近代の青年期概念が通用しない、子どもたちの様々な行動様式が浮き彫りになった。 3)平成14年度の目的は、近代的概念では理解できない子どもたちの行動様式を説明する枠組みを模索することであった。結果としては、MPD(Multi-Personality Disorder)と呼ばれる多重人格的な自我の在り方が、サイバースペースを環境として成長する子どもたちに常態的に見られることが明らかになった。 これらの研究を通じて、今後、教育システムは、一人の子どもに一つの人格、人格の統合、といった近代的規範によって支えられなくなる可能性が高いことがわかった。つまり、ポストヒューマンにはポストヒューマンエデュケーションが必要になるのである。 今後の課題としては、この期間の研究を通じて収集した、様々なインタビューデータ、教師への聞き取りデータ分析が途上であり、これらを通じて、さらに、青年期の自我の内面分析に入っていくことがのこされた。
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