本年度は研究の初年度であり、先行研究のレビューを中心に下記の作業を行った。 (1)暗黙知に関する他分野の先行研究の分析 近年は米国を中心としてナレッジマネジメントに関する先行研究が蓄積されつつある。ナレッジマネジメントとは、暗黙知の共有化を目指すものであるが、暗黙知を明示知に変換することによりコンピュータネットワークでその知識を組織する手法であり、民間企業における経営実践論として広まりつつある。 (2)教師の実践記録の分析 すぐれた教師といわれる実践家は、自らの経験を実践記録として残している。斎藤喜博、氷上正、東井義雄、向山洋一らの実践記録から、暗黙知獲得に関する記述を抽出した。暗黙知の多くは明示知の提示のみでは獲得できないものの、指導者の様々なメタファーが教師の暗黙知獲得に寄与する場面が多い。 (3)教員採用時の暗黙知の評価 近年の教員採用試験は、1次試験より面接、小論文、集団討論、模擬授業など、実践的力量の獲得を評価する試みが増えている。これらの試験の場でいかなる暗黙知の評価がはかられているかを分析した。
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