我が国において、学校選択の自由化が政策的関心事の大きな一つになっている。従来例外的措置とされてきた区域外就学が、学校の活性化のための方法として、各地の地方自治体において利用され始めている。さらに本年度から品川区において、本格的な学校選択制度がスタートした。品川区の教育長は、その導入目的は、「学校の個性化・特色化」にあると述べている。しかしながら一方で、学校選択制度がもたらす教育機会の不平等など、公教育制度への悪影響の懸念の声も強いものがある。本研究は、上記のような社会的状況に鑑み、学校選択の自由化が果たして学校の個性化・特色化に貢献するものであるのかを日本とイギリスを対象とすることにより実証的に明らかにすることを課題とするものである。 3カ年計画の初年度である本年度は、研究代表者がすでに収集してあるイギリスの学校選択自由化に関する質問紙調査のデータ(中等学校長、528人を対象)を、学校の個性化・特色化および不平等の観点から分析した。その結果、カリキュラムにおいて特色を出したりして、各学校が個性化・特色化をはかるというよりも、むしろ、16歳試験(GCSE)の成績向上の追究など、画一化への傾向がみられること、貧困層にとっては、相対的に負の影響を与えていること、が明らかになった。なお、この分析結果の一部は、本年度の日本教育制度学会大会において、発表した。 また、品川区の学校選択制度の動向に関しては、資料収集を行った。
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