我が国において、学校選択の自由化が政策的関心事の大きな一つになっている。従来例外的措置とされてきた区域外就学が、学校の活性化のための方法として、各地の地方自治体において利用され始めている。さらに2000年度から品川区において、本格的な学校選択制度がスタートした。品川区の教育長は、その導入目的は、「学校の個性化・特色化」にあると述べている。しかしながら一方で、学校選択制度がもたらす教育機会の不平等など、公教育制度への悪影響の懸念の声も強いものがある。本研究は、上記のような社会的状況に鑑み、学校選択の自由化が果たして学校の個性化・特色化に貢献するものであるのかを実証的に明らかにすることを課題とするものである。 イギリスを対象とした分析によれば、市場原理の下での教育への学校の対応は、GCSEなどの校外試験を重視する学校が多いこと(約8割5分)、カリキュラムの特化をはかる学校は、約3割程度であること、スペシャリスト・スクールへの移行を申請して学校の特色化を図ろうとする学校が一定程度あること、また、1部には、従来のすべての子どものニーズに対応するといういわばコンプリヘンシブ教育の理念を実現させようとする学校もあること、等が明らかになった。 さらに、イギリスにおける市場原理は、中等学校間の敵対的競争を生む場合が多いが、16歳以降の教育の提供との関係では、協力関係を生む場合があることや、初等学校と中等学校の結び付きや協力を生もうとする傾向があることが明らかとなった。
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