本研究の目的は、都市民俗生活誌の内容および所在を、全国的かつ網羅的に調査し、データベースの基礎となる目録を作成することにある。これまで村落の伝統的生活に関する民俗誌について『日本民俗誌集成』『日本民俗文化資料集成』(いずれも三一書房刊)等で整理されている。また、都市生活、現代的生活に関する研究論文のリストは社会学や地理学で作成されており、民俗学でも『日本民俗学』誌上で「研究動向」が毎年、紹介される。しかし、都市生活の1次資料的な記録、モノグラフに関する集成や目録はない。そこで、都市の民俗誌や生活誌の目録を作成すべく、本研究を開始した。初年度は、東北、関東・甲信越地方の都市生活誌資料の収集および整理・分析を重点的に行った。岩手県21作品、山形県38作品、宮城県3作品、茨城県9作品、栃木県3作品、東京都10作品、神奈川県15作品、長野県11作品を入手、整理・検討した。いずれも戦前のものは少なく、高度経済成長期直後の作品が多い。内容は、商家の生活や年中行事の記録が目につく。詳細な分析は今後の課題である。その他、次年度以降に向けて、公務出張の際に、大阪府、兵庫県、高知県、福岡県、長崎県の作品も入手、検討した。なお、本科研費による調査の成果として、平成13年度中に、集成版の第1弾として、内田ほか編『都市民俗生活誌』(全3巻、明石書店)を刊行予定である。また、資料整理等には大学院生の協力を、資料検索および研究方法については、都市民俗の大家である倉石忠彦教授(国学院大学)、有末賢教授(慶応大学)の指導を受けたことを付け加えておく。
|