秩父地方及び多摩地方でみられる生産生業用の竹籠について現地調査を行い、技術、分布等基本的な項目について新たな知見を得た。秩父郡小鹿野町、大滝村、東京都あきる野市を対象とし約200点の竹籠のデータ収集及び写真撮影を実施、文献データの収集は埼玉県所沢市、東京都八王子市、立川市でおこなった。データ収集は地域の地理的要因・生業形態・仕事の中での竹籠の役割・竹籠の形態と用途・竹籠の生産技術・竹籠の供給形式を項目として設定し進めた。竹籠生産工程のビデオ記録は対象職人のリストアップが中心となり、実施したのは東京都調布市在住の職人1事例である。 初年度の成果として具体的には次の5点が明らかになった。 1、秩父地域の中でも特に西秩父地域で特徴的な籠が存在する。馬籠と呼ばれるもので、生産技術の内容、社会生活との関わりについて実証的データを得た。特に西秩父の中でも小鹿野地域に集中して用いられていることが明らかとなり、急傾斜という地形的要因だけでない社会的要因が考えられる。 2、技術に関しては出仕事という営業形式、副業型の職人の存在が明らかとなった。 3、北多摩及び武蔵野台地の竹籠の基本的構成を確認した。その結果地域ごとの要求に応じた生産を行う地域型籠職と、地域を限定しない広範囲に流通する製品を生産する産地型の籠職が存在したことが明らかとなった。 4、いずれの地方にあっても第二次大戦前は養蚕用具生産が竹籠職人の主要な仕事であったことが共通している。職人数の多さ、多様な製品バリエーションは繭生産という畑作地帯内副業の発展過程で生じたと考えられる。 5、関東地方の竹籠は真竹を主要材料として使うことが知られていたが、孟宗竹も少なからず利用されていたことが考えられる。
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