本年度は最終年度として報告書にまとめるための作業を中心として行い、次に掲げる成果を得た。 1、関連地域博物館収集資料調査の目録づくり。 五日市博物館・大滝村歴史民俗資料館・小鹿野町文化センター・飯能市郷土館・所沢市中富民俗資料館・入間市博物館・埼玉県立歴史資料館・パルテノン多摩・多摩市文化財資料室・八王子市郷土資料館他で収集したデータは総点数370点である。撮影画像を含めたカード型データベース及び目録を作成した。 2、竹籠製作工程の映像記録の作成と編集 調布市深大寺の職人による六つ目籠の製作工程、埼玉県秩父市の職人による背負籠の製作工程、埼玉県小鹿野町の職人による馬籠の製作工程、多摩市落合の職人による目籠皮へぎ作業の工程の記録画像を作成、工程をパート図で表し身体技法について分析した。調布市深大寺の職人による六つ目籠の製作工程と埼玉県秩父市の職人による背負籠の製作工程を編集し20分の要約版を製作した。 3年間の研究は次のようにまとめられる。 1.対象地域の竹籠は地域の自然環境(山地・台地)、これにともなう生業の形態(雑穀畑作)に大きく関連している。 2.多様に展開した竹籠の種類・形状はその基本形をたどると畑作における落葉を活用した堆肥づくりの用具に行き着く。 3、竹籠の多様な展開は明治以降の養蚕、都市近郊の野菜作り、製茶など副業の多様さを反映したものである。 4、職人には専業と非専業の2つの営業形態があり、非専業は農家副業として行われていた。大正期のデータでは非専業の比率が専業を上回っていた。 5、専業と非専業の職人は異なった職人意識を形成していた。
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