1)オーストラリア先住民族(アボリジニ)の土地・水域権をめぐる係争事例について網羅的に情報収集した。水域権には河川・河岸を争うものと海域・海岸・干潟・環礁を争うものを含めた。また、狭義の土地権利法の対象とならない事例でも、資源主権・環境保全権(にもとづく開発拒否権)に立脚する紛争は研究対象とした。主な情報源は、マスコミ報道、諸々の先住民族組織や土地評議会の発信媒体、AIATSIS/NARU彙報、環境保全団体からの通報、個別事例の当事者・関係者へのインタビューなどである。 2)収集事例を分析し、FileMaker Pro-J5を用いて簡易データベース化した(容量2.4MB、件数1210件)。インターフェイスとして8種類の画面レイアウトを用意し、検索目的に応じて使いできるようにした。 3)特に詳細に情報収集したのは、北部準州のクロウー島海域権訴訟、トレス海峡のカウラレッグ海域権請求、中央オーストラリア鉄道計画(2ルート)、南オーストラリア州のハインドマーシュ島架橋問題(控訴審)、西オーストラリア州のガラジェリ訴訟(GMコットンの作付けと地下水採取をめぐる事例)などである。 4)9月16日から21日までオーストラリア国立大学マニングクラーク・センターで開催されたALATSIS研究大会に出席し、各州から参加した先住権調停の当事者(土地評議会スタッフ、人類学者、弁護士、先住権審判所スタッフ、先住民組織メンバーなど)から個別に事例聴取した。またAIATSISの資料室と国立博物館(先住民文化部門)などで資料を検索・閲覧・複写・購入した。 5)次年度も上記データベースの補充作業を継続するとともに、西オーストラリア州と南オーストラリア州での実地調査を計画している。
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