1)オーストラリア先住民族(アボリジニ)の土地・水域権をめぐる係争事例について網羅的に情報収集した。水域権には河川・河岸を争うものと海域・海岸・干潟・環礁を争うものを含めた。狭義の土地権法(連邦の1998年修正先住権原法と各州の先住民土地権利法)の対象とならない事例でも、資源主権・環境権・交渉同意権(RTN)に立脚する紛争は対象とした。主な情報源は、マスコミ報道、諸々の先住民族組織や土地評議会の発信媒体、AIATSIS/NARU彙報、環境保全団体からの通報、個別事例の当事者・関係者への照会などである。 2)収集事例を分析し、FileMaker Pro-J6を用いてMac OS X 10.3.3上に簡易データベース化した(容量3.9MB、件数1545件)。インターフェイスとして8種類の画面レイアウトを用意し、検索目的に応じて使い分けられるようにした。 3)特に詳細に情報収集を試みたのは、ダーウィン市内のララケヤ関連の諸係争、南オーストラリア州の放射性廃棄物処分場立地問題、大陸縦断鉄道(2路線)敷設にともなう土地権問題、レンジャー鉱山汚染問題、タスマニア南西部の原生林伐採問題などである。 4)収集事例にもとづき、論文「異文化と環境人種主義-アボリジニーの自然観と文化意識から考える」を執筆した(新曜社2003年刊、シリーズ環境社会学第6巻『差別と環境問題の社会学』pp.184-200)。
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