中国新疆ウイグル自治区のホータン近郊の農村において、3年に渡り文化人類学的調査を行った。課題調査は少数民族教育であるが、教育を学校制度だけでなく、マハッラといわれる地域共同体や家族のなかで、どのようにウイグル文化が伝達されているかも視野に入れながら調査した。義務教育でも欠席率が高い、親はまだ子供を労働力としてみている。小学校が新設され、1人政策にもかかわらず、子供は増えている。義務教育を終えると大半は農業を継ぐが、利益が上がらないことなどを理由に他の職業に行く人が増えている。小学3年からの漢語教育は効果が上がらず、無駄だとも言われている。ホータンから出ない限り、漢語は必要もない。漢語教育は団結のシンボルなのである。 家族はほとんどが夫婦家族であり、長男から順に結婚すると家を出て独立し、末子が残り親の扶養をすることが多い。同じマハッラには親戚がおおい。農村部では法律よりもかなり早く結婚する人が多い。早く孫はほしいということで、結婚を急がせる。親が決める結婚なので、離婚も多い。しかし、離婚はそれほど悪いことだとは考えられていない。結婚式は改革開放以来派手になっている。ウイグル文化の復興なのである。 村での大きな問題のひとつは宗教問題である。当局としてはイスラムを「宗教」ではなく、葬式や結婚式に関係する習慣としてとどめておきたいと考える。熱心なイスラム教徒では困るのである。ホータンでもワッハーブ派といわれる改革派が増えている。20〜30%いるといわれ、農民ではなく、商人、知識人に多い。メッカ巡礼が増え、サウジアラビアの影響である。かれらはイスラムの儀礼的部分を簡略化し、コーランと礼拝だけでよいと考える。
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