日本における都市祭礼研究は、都市人類学、都市民俗学、社会学などの分野で盛んに行われているが、その多くは個別の事例研究であり、祭礼同士の比較研究はほとんど行われていないのが現状である。 そこで本研究は、単独の祭礼の変化を社会史的に分析することから出発するが、比較を通じて、国の施策の変化、観光化や地域おこし運動、文化財指定とその影響などに考慮し、さらには日本全体の社会変動と祭礼との関係を明らかにすることを目的とした。その際に、都市祭礼の変容を「観光」「地域活性化」「文化財」という3つの観点に特に着目して、変動要因を明らかにすることを心がけて研究を行った。 具体的な調査対象としては、青森ねぶた祭、仙台七夕まつり、みなとの祭(神戸)、八雲山車行列、よさこい祭り、YOSAKOIソーラン祭りを中心に、その影響を受けた都市祭礼を取り上げた。この結果得られた知見は以下の通りである。 1.都市祭礼が戦後早い段階から観光資源として用いられている。2.いったん観光資源になると、観覧席の設置、コース変更、日程変更など、観光客を前提に祭礼の細部に変化が起きる。3.祭礼の遠征やセット化が容易に起きる。4.地域活性化の手段として祭礼が用いられるのは比較的新しい現象であるが、短期的には成功を収めるものの、それが長続きするとは限らない。5.祭礼が文化財に指定された場合、それが観光資源化につながる側面と、一方で祭礼の観光利用を妨げる側面がある。 なお、本研究の続編として、平成16年度から3年間の予定で、戦前の都市祭礼を対象とした科学研究費補助金を得ることができた。今後は2つの成果を合わせて発表していく予定である。
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