本年度は、首里士族系門中を調査対象とした。士族系門中は、文字記録としての家譜があるため、系譜が比較的明確である。門中組織の内部は必ず分節化し、宗家を中心にいくつかの中宗家に分かれている。各々の中宗家内部がさらに分節化している場合も見られる。宗家を中心とする門中全体をA単位とすると、中宗家をB単位、その下の分節をC単位、各家レベルをD単位となる。A単位が最大で、その中にB・C・Dが入れ子状になっている。具体的な祖先祭祀関係の活動は、Dを中心として、それぞれの場面で、C・B・Aのどの範囲で行われるかが異なる。活動の範囲を規定するのは、どのような理由によるのかをそれぞれの祖先祭祀活動を調査することによって、門中内部における組織間の分析を試みた。 また、従来注目されている位牌祭祀の禁忌について、長男が父親の跡を継承しなかった事例を分析し、結果的に「兄弟重合」及び「嫡子押込」の禁忌に抵触している場合、どのようにその禁忌を解釈し、その禁忌を回避しようとするのかについて調査を試みた。その理由として、いくつかのバリエーションがあると思われる。さらなる調査、分析を来年度継続する予定である。
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