今年度は、首里士族門中と石垣士族門中を対象として調査を行った。 首里士族の毛氏花城家で行われたウマチーの位牌祭祀を調査した。位牌に記された祖先、仏壇への供物などを調査し、一般のウマチーとの比較を試みた。とくに年期法要やウマチーの供物は、いろいろしきたりがあり、ウソージンという沖縄特有の精進料理が使われていたことが判明した。本土の精進料理とは異なり、肉や魚が使用されており、むしろ中国の供物である「三牲」の影響が見られる。 石垣士族に関しては、家譜が多く残されており、家譜分析に着手した。近世部分の記録によると、直系士族のみを載せるのではなく、兄弟姉妹すべて名前が記され、兄弟の子孫も記載されている。その法式は、中国の族譜の書き方に類似している。また、門中による祖先祭祀活動をみると、沖縄本島で盛んに行われているウマチーはなく、その代わりに旧暦正月十六日に仏壇と墓での祭祀を行うことを確認した。 士族門中とはいっても、沖縄本島と石垣では、その組織の内容や祖先祭祀活動に違いが見えた。この点について、従来ほとんど調査報告や研究が行われてこなかったので、今後もこの比較研究を継続する必要がある。
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