研究2年目にあたる平成13年度は、石垣島北部地区を中心に以下の点に関する調査を実施した。また、石垣島在住の鳩問島出身者からも聞き書きを実施した。 特に伊原間地区におけるインテンシヴ調査の実施により以下の成果が得られた。 戦後沖縄本島や宮古島から官製移民あるいは自由移民として伊原間地区に入植を開始した各家族は、復帰後、農産物輸入自由化と農業政策の変化を直接受け、様々な経緯をたどっていった。再び、出身地にもどっていった家族、石垣島中心街に転出した家族、あるいは那覇や木土に転出していった家族などである。しかし、その一方で、近年の高度経済成長の見直しによる、故郷再生運動、地域おこし、帰農や行政側の地域活性化などの動きにより、新たな動きが出始めている。そのひとつは、本土などから移住してきた若い家族の増加、いったん他地区で働いた後に、定年を迎えて再度故郷にもどってきた人々の増加である。 これらの点に関して、世帯調査を実施して、詳細なデータを得ることができた。本土から移住してきた家族の多くが、美しい海と豊かな白然、そして比較的観光開発が行われていない点を評価して移住してきた。また、伊原間が古くから存在した「伝統村落」でありながら戦後の入植者を受け入れ、同時に石垣市が市営住宅を建設したことで住居に関する問題が払拭された。古くから祖先代々当該地区に住んでいる家族、戦後の入植家族、近年になって移住してきた木土出身者が協力して新たな共同体づくりに取り組んでいる。それは、当該地区の伝統的祭祀と新たに地域おこしの一環として考案された祭祀に協同で参加するという状況を作り出している。 かつての「過疎地」が現在新たなる再生の渦中にあるとの結論を得た。
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