毛皮交易の発展と皮革加工技術の進展には相関関係がある。当年度は物質文化と文献資料の側面から、下記のように国内外の調査を実施した。 国外調査:北東アジア以外の事例として2001年11月から12月にかけて、カナダ・アルバータ州のアルバータ州立博物館とカルガリー大学の極北研究所において、平原インディアンのバッファローなめし技術を具体的にとりあげ、その技術的な変遷と毛皮交易史の概要を掌握することにつとめた。 国内調査:近世の日本社会とアイヌ社会との関わりは、幕府の外交システムとして、松前藩を仲介して実施されたという側面を持っている。18世紀以降、本州商人による請負経営の展開にともなう進出や開発の結果、アイヌの漁業労働者化が進み、ロシアの南下という外圧の危機管理に対応して、蝦夷地幕領化や内国編入が制度的に飛躍的に進行する。その結果、18世紀以降の蝦夷地生産物としてラッコ皮、アザラシ皮、ネフツ、コヒツノ、アモシヘ、オットセイ、タケリ、クジラ、魚油、干鱈など、多種多様な品目が松前、江差、箱館を経由し、本州に回漕され、対外貿易にも利用されるようになっていく。それに付随して、中国市場への毛皮交易の主要産品として急速に重要性を増大させた北太平洋のラッコについては、とくに移性者と先住民双方の技術革新によって、その捕獲方法だけでなく、なめし加工処理の効率化がはかられていたことを確認し、その成果の一部を国際シンポジウム「北太平洋における先住民交易と工芸」(2001年10月1-5日於国立民族学博物館)の席上、発表した。
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