1、北海道内における擦文文化期を中心とする時期の織機、およびそれに関連する出土資料調査を行った。なかでも、この時期の常呂町榮浦遺跡からの織機関連資料は、綜絖であることが判明した。さらに、豊富遺跡から出土した布片は、この綜絖を用いる織機と同様のもので製作された可能性が高いものと考えられ、この時期にはほぼ織る技術、織機が存在したものと推察される。また、続縄文期の釧路市幣舞遺跡からは織機に用いるへらと同形態のもの(骨器)が出土していることを新たに発見し、これら織り技術がこの時代まで遡る可能性を示唆するものと考えられる。 2、市立函館博物館、青森県立郷土博物館、青森市立稽古館などにおいてイクパスイの資料調査(合計386点)を行った。これらの結果、イクパスイで最も年代が遡る資料は、千歳市美々8遺跡の10世紀から15世紀に位置付けられるもの、さらには上ノ国町宮の沢川遺跡の近世初頭のものなどが代表的なものであり、イクパスイがほぼ中世社会のアイヌ民族に物質資料として存在していたことが明確となった。 3、網走市郷土博物館所蔵の板碑の岩質は、緑色片岩(緑泥片岩)であることが確認された。産地としては特定できないが、北関東の三波川変成帯の可能性も否定できないものと判断される。しかし、この板碑がいつの時代のものか、特定するにはいたらなかった。
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