研究第3年度にあたる本年度においても、引き続いて土浦市立博物館が所蔵する近世の諸家文書や、茨城県立歴史館所蔵の長島尉信関係文書・静嘉堂文庫所蔵色川三中来翰集などを中心として調査・研究をすすめた。色川三中のご子孫にあたる川越市在住の色川徳治氏の所蔵する「色川三中来翰集」や「家事志」などの関係資料が一括して土浦市立博物館に寄託され、研究の条件も著しく良くなった。とりわけ色川三中が記録した色川家の日記「家事志」は、たんに一家の記録としてだけではなく、近世土浦の町方の出来事が長期にわたって綿密に記録されており、多面的な情報を得ることが出来る。本史料の復刻出版の準備も一段と進捗することが出来た。また土浦市石塚家所蔵の「万附留」は元禄十六年から正徳二年にいたる期間の土浦町方の記録で、土浦城下の物価の変動や諸商業の営業・市での取引の様子など、都市形成の発展の過程をきわめて具体的に明らかにすることができる好史料であった。また本年度に新たに着手した作業として土浦城下町の絵図資料の収集と分析作業があるが、かなりの点数を収集することが出来た。これらの諸資料から解明されてくる事実を、「遠中未来記」「土浦洪水記」「公事小言」などの長島尉信の著作などと総合して、近世土浦の都市形成と城下町に住む人々の生活の様相を詳細に明らかにしつつある。
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