研究最終年度の平成15年度においては、近世土浦の町方の古文書類のなかから研究課題に関する各種の断片的情報を総体的に組み合わせることを企図して「近世土浦歴史年表」を作成した。これは、「武江年表」的な年表の作成を意図したもので、武家地・足軽長屋、町人地など城下町土浦を構成する市街地の屋敷地の変化、あるいは道路・堀・橋・木戸など都市のハード的側面での変化に関わる各種の情報や洪水・火災などの変災の記録、商業活動など町方の経済的側面での変化等々、いわば各種の情報を集積することによってそこからひとつの時代の様相を浮かび上がらせようという試みである。色川三中の残した日記「家事志」は、たんに色川家の記録としてだけではなく近世土浦の町方の出来事が長期にわたって綿密に記録されているが、同時に藩士や町人たちによる歌会などを通じての交遊など多面的な文化的活動の情報を得るが出来た。古文書類から抽出したこれらの各種の情報をもとに「近世土浦歴史年表」を作成したが、一見断片的とみられる個々の情報の相互関連性が明らかとなってくる。「家事志」復刻出版の作業は進捗し、平成16年3月に第1巻(文政九年8月〜文政十二年四月)が土浦市立博物館より出版される運びとなった。また長島尉信の著述の中から「御城内外御定法書」「土浦洪水記」「公事小言」「遠中未来記」など近世土浦に関する論考を選んで復刻した「長島尉信土浦関係資料集」の刊行(土浦市立博物館発行)の準備が整った。
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