研究課題/領域番号 |
12610328
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横山 伊徳 東京大学, 史料編さん所, 教授 (90143536)
|
研究分担者 |
松方 冬子 東京大学, 史料編さん所, 助手 (80251479)
松井 洋子 東京大学, 史料編さん所, 助教授 (00181686)
鳥井 裕美子 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (50180203)
木村 直樹 東京大学, 史料編さん所, 助手 (40323662)
|
キーワード | オランダ / 長崎 / ティチング / 通詞 / 朽木昌網 / 絵秘録 / 大英図書館 / 内通詞小頭 |
研究概要 |
F.レクイン編『ティチング私信集』(以下、『私信集』)は、18世紀を代表する日本学者であるI・ティチングが残した私信(公文書でない私的書翰)を集成したもので、いわゆる出島商館文書=公文書からはうかがえない、元商館長ティチングと出島商館員、日本人通詞、蘭学関係者との交流を物語る事実を多く含んでいる。 本研究では、この『私信集』を日本史史料として利用するため、共通のツールとなるような参考データ集を作成し、全体的な内容理解・翻訳に供することを目的とした。そのため、(1) 文字列のため、フルテキストの作成を行ない、これをgrepによって検索する基礎テキストとするデータを作成した。 (2)ティチングが日本古代史の研究のために強く求めた、古代史(記紀)用語については、将来の翻訳文の参考データとして解説文を作成した。 (3)人名注参照のため、県立長崎図書館所蔵の分限帳の撮影を行なった。 (4)ティチング関連史料として、長崎市立博物館の『本木蘭文』その他の撮影を行なった。 (5)当時の阿蘭陀通詞の作成した文書の体系的理解のため、長崎市立シーボルト記念館の中山文庫の撮影を行なった。 (6)オランダおよびイギリスにおいて、関連史料の調査を行なった。 (7)2000年10月13日(金)に、Dr. Lequin講演会にあわせた公開研究会を行ない、木村・西沢美穂子が研究発表を行なった。また、2000年12月17日(日)に、長崎において研究分担者による研究会を行ない、横山が中間報告を行なった。2002年3月12日に横山が洋学史学会で成果について報告した。 以上の結果、次のような研究実績があがった。第一に、『私信集』に所収された書簡のテキストクリティークが進展した。第二に、ティチングと関係者と間に交わされた各書簡の往復関係が明確となった。すなわち、バタヴィアをセンターとする東印度会社の交易圏=定期船連絡網のなかで、長崎←→ベンガル間の通信が成立していることが解明された。第三に、書翰に登場する人物や書籍を細かく追跡することにより、日蘭文化交流の諸側面を明らかにできた。特に内通詞小頭・働之者の役割や、馬場文耕の書籍を通じた当時の幕府政治情勢の判断などが興味深い。
|