今年度の調査で確認および採訪を終えた史料としては東京大学史料編纂所所蔵の諸記録・古文書、国立公文書館内閣文庫の諸記録、京都大学所蔵の毛利氏関係文書および朝鮮出兵期の『編年文書』、国立国会図書館所蔵の諸資料、岡山県成羽町の山崎家文書、福岡県大牟田市の立花家文書などがある。このうち、東大史料所蔵の諸記録・古文書を中心に、出兵期の輸送を担当した寺沢正成の役割を見直し、途中経過を交通史研究会大会で報告し、まとまった成果の前半部分については『交通史研究』誌上に発表した。後半部分についても次年度しかるべき学術雑誌への掲載を考えている。山崎家文書は写しではあるが、文禄の役に際して対馬を警備し、物資・兵員の補給にもかかわった山崎家盛の関係資料であり、この史料群によって補給中継地の機能等がかなり克明にしることができる。次年度中には何らかのかたちで成果を公刊したい。立花文書では秀吉が高橋統増に充てた朱印状の写しを見いだすことができた。これらは正本の存在を前提とした上質なもので、その大半が朝鮮出兵期の未見文書である。
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