1、平成15年度は科学研究費補助金交付の最終年度にあたるため、本研究の総括をおこなった。具体的には、年度当初に研究成果報告書の構成を考え、収録対象となる論稿の整理、史料の選定・翻刻を進めていくことにした。これまでの具体的研究成果としては、岡山県成羽町の山崎家文書を中心に考察を加えた「「対馬」からみた文禄の役」、および朝鮮出兵期にキィパーソンとして活動した寺沢正成のモノグラフを発表しているが、本年度はこれらの論稿をより完全なものとすることを研究の主軸とした。 2、史料調査については、総括的な意味合いから東京大学史料編纂所を中心として進め、国立公文書館(内閣文庫)、慶応義塾大学図書館などに補充的な調査をおこなった。一連の成果は成果報告書に収録する三編の史料としても結実したと考えている。 3、具体的な研究成果としては、『日本歴史』誌に単著「文禄期発給秀吉朱印状の年紀再考」を掲載し、また福岡大学で開催された七隈史学会第五回で「豊臣政権の『船手』『船方』について」という口頭報告をおこなった。朝鮮出兵における水軍の動き、働きについて具体的な論文を執筆するという作業にはいたらなかったが、国内統一期から朝鮮出兵期に及ぶ時期について、豊臣政権が組織した「船手」「船方」について一定の理解を得ることができた。 4、以上、今年度の調査・研究をふくめ、これまでの成果によって豊臣政権のおこなった朝鮮出兵について、史実確定は格段に進んだ。しかしながら、課題も多く残っており、それらについては今後の研究に委ねたい。
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