初年度でもあり、基本的には史料および研究文献の収集につとめた。とくに獣害をもたらす動物として駆除の対象となった狼・猪・鹿、狼によって襲われた馬について収集した。具体的には、八戸藩・盛岡藩の藩政史料で活字化されているもの(自治体史等)から、関係記事をピックアップするとともに、まだ活字化されていない時期の、とくに獣害が問題となる寛延期前後の『盛岡藩雑書』(マイクロフイルム)からの抄出を進めた。また、北奥地域に限定しないで、人間と自然の関係史について考察するうえで参考になると思われる文献・論文を岩手県立図書館・宮城県立図書館、国会図書館等で収集し、入手できるものは備品として購入した。学術論文ではないが、一般読者向けの新書として『飢饉-飢えと食の日本史-』を今年度刊行することができた。このなかで、八戸藩の猪ケカチといわれる寛延の飢饉を取り上げた「猪が荒れる」や、秋田藩の僧浄因の「羽陽秋北水土録」などに言及した「環境思想の系譜」という節を設けて、テーマに直接関わる問題を意欲的に取り込んだ。また、雑誌論文として「気候変動と飢饉-列島日本の歴史のなかで-」という小論を書き、冷害・凶作に目をむけるだけでなく、温暖化がどのような環境変化を引き起こすのか、について一定の理解を深めることができた。とくに北奥地域の場合、寒冷化・温暖化という問題が生態系、人間と自然の関わりに大きな影響を与えていることに十分な注意を払う必要性を感じた。来年度は主として焼畑・大豆・山林に関心を向けて、研究の視野の拡大に努力していくことになろう。
|