初年度に実施した現地調査の成果を踏まえ、2年目の今年度は、文書館や博物館等の関係諸機関における文書の閲覧・収集を中心にして研究を進めた。おもに和歌山県立博物館、京都府立総合史料館、山口県文書館、沼津市歴史民俗資料館において、中世後期から近世にかけての、山林資源の用益および流通に関する史料を閲覧し、必要に応じて写真撮影を行った。 また、本研究がおもな調査対象地域とした滋賀県安曇川流域および和歌山県紀ノ川流域については、現地調査の成果をまとめ、考察を進めつつある。具体的には、それぞれのフィールドにおける、中世・近世史料上に見える地名の現地比定、山林資源の用益(材木の伐り出し・加工・炭焼・柴刈・秣刈等)に関する聞き取り調査、近代を中心にした材木の筏流し・薪炭の行商に関する聞き取り調査の成果をまとめた。その結果、人々の生活に欠かすことのできない様々な資源を供給する山林用益のあり方、そして、それらの用益を支える河川水運を主とした流通の実態を明らかにすることができた。また、山林資源の用益行為は、用益によって得られた多様な品が、人々の居住する地域社会と他の地域社会を結ぶ流通があってはじめて、人々の生活のための糧になっているということを再確認した。つまり、用益と流通の両者を、河川流域という一つの枠組みのなかで考察することが必要であると考えられるのであり、本研究は、それぞれ単独で論じられてきた資源の用益論や、材木などの流通論を結合することを意識しつつ研究を進めた。
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