1.日本古代の年中行事書に関する図書を購入し、最新の研究成果の吸収と分析につとめた。 2.宮内庁書陵部・国立公文書館・東京大学史料編纂所・国立歴史民俗博物館などに出張し、『江家年中行事』と『年中行事秘抄』の写本調査を行った。平成13年11月には東山御文庫所蔵の年中行事書を調査した。大東急記念文庫本『年中行事秘抄』など良質の古写本と思われるものは、紙焼写真にて収集した。 3.静嘉堂文庫本『江家年中行事』と大東急記念文庫本『年中行事秘抄』の記載を、本文・割書・頭書・裏書などに分けて一覧表化し、その共通点と相違点が確認できるようにした。その結果、『年中行事秘抄』は『江家年中行事』の本文項目を基本的に継承していることが判明した。また、大東急本の裏書は中原師元が付加したものと考えられ、大東急本には師元本の様態がよく残されていると想定される。その大東急本の本文末尾に「都督江納言、以近代公事被撰定」とあるのは注目すべきで、『年中行事秘抄』の原著者は大江匡房であるとする説が支持されるべきであろう。 4.東山御文庫には2種の『江家年中行事』写本が伝えられており、1つは従来から知れている系統本であるが、いま1つは異本というべきもので、北朝の天皇の忌日を追記した写本であることが判明した。 5.なお、写本調査の過程で、以前から捜索していた藤原行成の除目書と思われる写本を確認した。国立歴史民俗博物館所蔵の広橋家旧蔵本『叙除拾要』1軸がそれである。その概要についても報告し、あわせて翻刻文を作成した。
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