本研究では、まず東海道箱根関所史料のうち、かつて筆者らが収集・刊行した箱根関所研究会編『東海道箱根関所史料集」全3巻・箱根古文書を学ぶ会『箱根御関所日記書抜』全3巻以外の散在史料の収集に全力を傾注した。その中心となるものは、小田原旧藩主稲葉家の近世前期の『日記書抜』『御自分日記』『永代日記』をはじめ、小田原市立図書館蔵の『片岡文書』『小田原史料覚書』『足柄史叢』『断鳳片鱗』などの関所関係分、箱根町・小田原市内の個人所蔵関所史料を蒐集した。特に、韮山町江川文庫の『相州箱根御関所修復出来形帳』は現在の箱根関所復原工事中の基本資料で、これを写真撮影して文化庁にも紹介したものである。箱根関所の裏関所の筆頭、根府川関所の分は、小田原市立図書館に収録された『根府川御関所日記書抜』で、このほか個人所蔵の史料も多いが、他に仙石原関所・矢倉沢関所・川村関所・谷ヶ村関所の各個人所蔵史料も、すでに各『町史』史科集収載の分を含めて大略収集することができた。 次に栗橋関所については、関番士足立・加藤・島田家など個人所蔵分は完全に撮影に成功し、これを補完する粟橋宿本陣・名主・問屋および渡船場差配の池田家、名主の村田家史料もすべて整理・分類のうえ写真撮影を終えた。関連分として古河歴史博物館蔵の『鷹見泉石日記』1〜8巻は現在刊行中の本すべてを購入した。また、箱根・栗橋両関所とも西国、北田方面の諸大名の参勤交代道中記その他が数多くあり、両関所についての記事も採録したが、これらには近世関所の実態をよく示すものがふくまれており、今後の刊行を目ざして執筆中の著作(全1500頁を予定)に適宜活用している。
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