研究の初年度にあたる平成12年度は、これまでの研究成果を踏まえた上で、3年計画の研究の準備として以下のような作業を行った。 (1)木簡・墨書土器を始めとする出土文字資料のうち、宮城の構造を考える素材となる史料を抽出して整理する作業を行い、どのような文字資料がどこから出土しているかの全体的な把握を目指した。その上で、出土遺構と合わせて当該地の性格を考察した。 (2)正倉院文書など奈良時代の文書史料から、平城宮などの都城関連史料を抽出する作業を行った。この作業の過程で国立歴史民俗博物館所蔵の正倉院文書レプリカの熟覧を行い、その成果を活用した。 (3)続日本紀など編纂史料から都城関連史料を抽出する作業を行った。 (4)従来、平城宮で遺構の性格の推定がなされている官衙について、その根拠などを再検討するための資料整理を行った。 以上の作業はいずれも継続中であり、まとまった成果として公表するには至っていないが、その一事例として別掲の「阿弥陀浄土院と光明子追善事業」を活字化し、正倉院文書熟覧の成果として「二つの新任国司食料支給と公廨食法・国司巡行食法」を公表した。また、『平城京と木簡の世紀』を刊行し、平城宮の全体像と歴史的な流れについて現在の知見を盛り込んだ。
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