研究概要 |
本研究では、近年利用可能になった膨大な量の清代漢籍史料の中に散在する17-19世紀の東南アジア大陸部に関する史料を収集し、史料集成として学界に提供するとともに、これらの史料の分析を通じて、今日のミャンマー、タイ、ベトナムなどの原型となる国家が形成された18世紀末から19世紀初頭にかけての東南アジア大陸部の大変動の背景を解明する手がかりを探求することを目指し、以下の研究を行った。 1.史料文献目録・解題の作成 「タイ関係漢籍史料目録」「ビルマ関係漢籍史料目録」を作成し、史料の所在を調査するとともに、その一部を、東南アジア関係漢籍史料の解題として『岩波講座東南アジア史』別巻に発表した。未公刊の清朝档案史料については、北京の中国第一歴史档案館所蔵の外交関係の朱批奏摺、軍機処録副などの档案、および、台北の故旧博物院所蔵の緬档の目録化を行った。 2.史料の収集と抽出、および史料集成の作成 公刊史料の内、宮中档乾隆朝奏摺(全75冊)、乾隆朝上諭档(全18册)から東南アジア関係史料を抽出し、その一部を、『東南アジア関係漢文史料集成 清代編I(宮中档乾隆朝奏摺中ビルマ・雲南関係記事)』として、報告書を作成するとともに、続巻の編集作業を継続中である。 3.史料の分析 史料の分析により得た知見により、東南アジア史学会第67回研究大会(平成14年6月1,2日)において、シンポジウム<17世紀を再考する-「交易の時代」の終焉をめぐって->を組織し、17-18世紀の東南アジア史の再構成にあたって、大陸部東南アジアにおける陸域のネットワークの解明の重要性を指摘し、交易ネットワークの変化、および、鉱山開発にともなう経済の活性化が、18世紀における変動を生み出した可能性を指摘した。
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