本研究は、朝鮮王朝(李朝)時代の水運に関する基礎的データの収集・整理、およびそれらに基づいた実証的研究を通じて、当該時期における水運の具体的様相を明らかにし、もって、水運が当時の社会・経済に及ぼした影響を多角的に考察することを目的とするものである。具体的には、(1)官営の税穀船運機構である漕運制の制度・実態の解明、(2)船舶所有者による水上活動の実態解明、の2点を主要な課題とする。 本年度はその第2年目に該当し、おおむね以下のような研究活動を行った。 (1)(1)について 1)昨年度に引き続き『朝鮮王朝実録』漕運関係記事データ・ベースの作成を進めた。本年度は『宣祖実録』を中心に関係記事を収集し、史料原文をカードに採録した。電算入力作業は次年度に持ち越された。 2)『実録』以外にも、朝鮮前期の各種法典類にみえる水運関係規定の史料原文をカードに採録し、一部は電算入力した。また、朝鮮後期の各種の地方史料からの漕運関係記事収集も継続して進めた。 (2)(2)について 1)この課題は、残存史料が少なく、収集作業制約もあって作業は進捗しなかったが、以前から進めている、19世紀における済州島民の海上活動関係(およびそれにともなう海難、漂流・漂着関係)の史料を、『漂人領来謄録』等から収集した。 2)済州島民の漂流に関連して、漂着地での出身地詐称問題について朝鮮史研究会大会にて研究発表を行った。 総じて、昨年度同様、史料の収集・整理が研究活動の中心となった。次年度は最終年度であり、収集史料を活用した実証的研究も進めていきたい。
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