始めにこれまでに研究上不足分の史料収集を開始した。近年のインドの各研究機関から出版されたムガル史の史料研究・史料紹介を収集した。 今年度は、デカンのハイデラバードの中央大学Central University、オスマニア大学Osmania Universityを訪問し、それぞれの大学の歴史学の研究者と意見交換を行い、さらにムガル都市史研究史料について調査を行った。 オスマニア大学の歴史学科において、ゴルコンダ王やムガル皇帝のファルマーンfarman(勅令)の収集・整理・解読の進行状況を調べた。16世紀から17世紀にかけての膨大な量のファルマーンはムガル史を明らかにする史料として、その成果が大いに期待される。 デリーにおいては、デリー大学Delhi Universityを訪問し、ムガル史の研究状況を聞いた。とくに、ムガル史の第一人者である、デリー大学のOm Prakash教授からインドでのムガル史研究状況について知見を得た。 当該研究テーマに即して、デリーに残るデリー・サルタナット期からムガル期にかけての建物の遺跡を調べて回った。デリー近郊に多数残る建物遺跡は、宗教遺跡のみならず、城砦、都市の大門、市壁である。今年度の調査で、文献と合わせ、ムガル期の大デリー市建設にいたる状況を遺跡の上から確かめることができた。とくに、ムガル期の都市建設の上に大きな影響を及ぼしたスール朝のシェール・シャーの残した遺跡調査が研究上重要な点である。
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