研究概要 |
今年度は,昨年度に引き続き,北インドにおけるインド・ムスリム都市,デリー建設の歴史的社会的考察をおこなった。今年度は,インド・ムスリムの都市にもともと移住する商人集団を中心とする都市民の形成と,大都市デリー建設に至るまでの商人集団の役割を取り上げていくことで,その都市建設の歴史社会的状況を明らかにしようとした。研究補助者を使って,都市史研究に欠かせないデリー市の歴史地図を様々な文献から収集し,整理した。地図をコンピューター上に取り込み,歴史的研究に使用できるものとした。 現在の都市の諸問題を解決していく糸口を見出すために,本研究の目的とするような,都市の建設の本来の計画性・大デリー建設に至るまでの歴史社会的状況を都市の発展で探ることが重要であり,都市建設の意図をめぐる歴史的経過を明らかにした試みはこれまでの研究には見られなかったものであり,これは本研究の実績である。 北インドのムスリム都市に関しては,従来の研究は,主にそのイスラム宗教建築物や王城の遺跡を調べること,貴族の館を調べることに重点が置かれていた。本研究に直接参考となる分野の研究もある。特に,13世紀から16世紀にかけてのデリー・サルタナット時代やその後のムガル時代の宗教遺跡を調査し,その歴史的背景を分析した貴重な研究が我が国においてすでになされている。 本研究は,そうした従来の数少ないイスラムの遺跡調査や,その歴史学的背景に関する分析を踏まえ,最終年度にあたり,まとめとして報告書を作成した。
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